借地の処分と利用
「借地」とは、土地の所有者(地主)等と契約を結び、地代を払って土地を利用する権利を(借地権)を取得した土地のことです。
建物所有を目的とする借地権それ自体に大きな経済的価値があります。
借地を処分して価値を実現化したい、借地の価値を利用したいときにどうすべきでしょうか。
・借地権を相続したが、今後使用するつもりがない土地である。
・引っ越しを考えているため、今住んでいる借地権付建物を売却したい。
・高齢のため、老人ホームに入居して、今住んでいる借地権付住宅を処分したい。
・地主から地代の値上げや更新料の値上げをされたので、この機会に処分したい。
・都市の再開発のため、借地権を売却するよう迫られている。
借地の処分・利用方法
借地権の処分・利用には、下記のような方法が考えられます。
1. 地主に借地権を無償返還する。
2. 地主に借地権を買い取ってもらう。
3. 借地を所有権化する。
4. 第三者へ借地権の売却を行う。
1の場合、借地権を無償で返還するため、借主にとってのメリットはありません。
土地賃貸借契約書には、原状回復義務の条項が記載されているのが一般的で、地主から更地にして返還することを求められることが多くあります。
一方で、地主からすると、借地権を無償で返還してもらえるため、底地権と合わせ所有権となり、土地自体の価値も上がります。
2の場合は、理想的なパターンではありますが、借主と地主で借地権の譲渡価格についてもめることが多くあります。
3の場合は、借地人が所有地としたい土地(借地)部分と地主が取り戻したい土地(貸地)の見解が合致する場合、借地権を消滅させる一方、借地の一部の所有権を取得する合意ができます。
ある程度の広さの借地が対象となるものです。地主と借地人の取得土地面積の配分割合が大きなテーとなります。
また、借地部分が再開発の対象部分となっている場合、協議により、借地権をマンション等の区分所有権化することもあります。
複雑な交渉を要することですので、弁護士等の専門家に相談すべきです。
4の場合も、第三者への売却には地主の承諾許可が必要ですので、借主と地主で協議を行わなければならないため、もめることが多くあります。
トラブルが大きくなる前に、弁護士へご相談ください。
無断譲渡の禁止
借地権とは、財産性のあるもののため、権利者の意思で売却が可能なように思われます。しかし、法律上、借主は地主の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡したり(借地権の譲渡)、賃借物を転貸することができません。そのため、土地の賃借権(借地権)を、地主の承諾を得ることなく売却することはできないのです。
借地上の建物を売却する場合も、借地権まで譲渡されることになるため、建物だけの売買契約とはなりませんので、地主の承諾が必要です。
借地非訟手続(借地権譲渡・建物建て替えなど)
地主が借地権の譲渡や借地上の建物の建て替えについて承諾しないとき、借主は裁判所に申立てを行い、地主の承諾に代わる許可を求めることができます。この手続きを「借地非訟手続」といいます。
譲渡承諾の借地非訟手続きでは、地主に優先的な買取権が認められています。これを「介入権」といいます。
介入権が行使された場合、地主は、借主が譲渡しようとした相手に優先して、自らが借地権を買い取ることができます。
迅速に、できるかぎり円満に解決するためには、専門家である弁護士を間に入れることをおすすめします。
借地の更地化
前述にもあるとおり、借地権を返還する場合、原則として原状回復として更地にして、地主に返還する必要があります。借地権契約が終了した場合も同様です。
一方で、借地権者には「建物買取請求権」という権利もあります。
借地借家法には「借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる」とあります。
建物買取請求権には、相手の同意が不要なので、建物買取請求権を行使した時点で、売買契約が成立します。そのため、地主が認めないということはありません。
また、借主は、建物買取請求権を行使すれば、地主から建物売買代金の支払があるまで土地明渡を拒むことができます。
ただし、地代を払っていない借主の場合は、建物買取請求権を行使できない場合がありますので、ご注意ください。
再開発と借地権
都市の再開発においては、土地が広範囲に及ぶことが多く、関係する土地の借主、地主も大勢かかわることになります。
借主を含めた開発区内の権利者の権利は、施設建築物と敷地の上の権利に変換されます。適正な手続きに基づく開発の場合、原則として、借主は地主の意向とは関係なく、従前の借地権と同価値の施設建築物の一部と、敷地に対する権利の持分権を取得することができます。権利変換を希望せずに、補償金を受領して他に転出することもできます。
しかし、日本という狭い島国では、土地に対する思い入れは人一倍強く、金銭的な損得勘定だけでは解決できないことが多くあります。
当事務所では、何十人もの借地人がかかわっている案件にも携わった経験があります。一件一件、納得していただける条件をご提示し、粘り強く交渉することで、再開発の事業推進に貢献することができました。
弁護士に委任するのではなく、弁護士が当事者にアドバイスだけを行い、ご自身で交渉を進めるという方法も可能です。お客様にとって、もっともスムーズな方法をご提案いたします。